Interview with World Collapse In My Burden
“ネガティブで終わるのは絶対に嫌で、どのような形であれ最終的に前に向かって苦しみに対して勝ち上がりたい”
質実剛健。繰り出されるリフの強度。その熱いリフに自然と拳が上がる。姫路00's styleメタルコア【World Collapse In My Burden】が2/24に満を持して遂に新音源『TO THE GATE』をリリースした。
中心人物であるギターのケンジ氏にバンドのこと、そして自身もWebジンでレコードを紹介するほど数え切れないほどの音源を聞いている彼に敬愛するメタルコア、ニュースクールHC/エッジメタル、ブラックメタルバンドについて教えてもらった。
巻末にKENJI氏による【現行海外メタルコア/エッジメタル/ニュースクールHCバンド紹介】も掲載。
WORLD COLLAPSE IN MY BURDEN(以下WCIMB)は、メインストリームとアンダーグラウンド、そして00年代メタルコアとニュースクールHCの良さをあわせ持ち、絶妙なバランスで融合を果たした貴重なバンドだと思います。バンドについて色々と教えてください。
それではまず、WCIMBの結成から現在に至るまでの簡単なバイオと、音の変遷、メンバーの変遷など教えてください。
結成は2011年末、同じ大学に通っていた1つ下である現WCIMBのVo、DSK(ダイスケ)氏とTHE HAUNTED/IHSAHNの来日大阪場所へ行ったとき、転換中に「バンドやらへん?」という話をしたのがきっかけです。
当時僕は神戸でメタルコア/スクリーモ系のバンドをやっていたのですが、そのバンドから既に脱退する事を決めていた状態だったので、「DSKとはメタル/ハードコア話から性格含めて色々趣向が合うし、新しいバンドで僕達なりにやってみよう」と思いました。
その翌年の12年にまたDSK氏とLAMB OF GODの来日を観に行った時、ちょうどDSK氏の十代の頃の友人である現WCIMBベースのケイタ氏が同行・車の運転をしてくれまして、彼は過去DSK氏からPANTERAを聴かされて衝撃を受けてメタルに入ったということらしく(笑)メタル好きで初対面ながらその日の内に僕とも話が合って「ベースとして入らへん?」という話にも乗ってくれて、そのまま加入に至るという形になりました。
その後ドラムが中々見つからず、友人や別バンドのドラマーのサポートを得つつスタジオにて練習を重ねていたのですが、ケイタ氏が同じ大学の軽音部で共に活動していた友人であり、このバンドへの加入をずっと誘っていたドラマーのタカシン氏が入ってくれる運びとなり、13年末~14年初頭頃、ようやく現在のラインナップが固まりました。
タカシン氏の主な音楽的趣向はメタル/ハードコアではないのですが、何故か軽音部ではそういうのばかり叩いていたようなのでこのバンドにしっかりはまりました(テレビゲームのロックマンXが好きというのも全員共通でこの辺りもドンピシャでした笑)
そこからスタジオ練習を重ねて、14年8月にようやく初ライヴ、同年12月に1st demoをリリース、19年8月に2nd demoをリリースしながら今に至ります。
(音楽性ですが)結成当初はThe Ghost InsideやEternal lord、Emmure等といった、2000年代後半~10年代前半のモッシュ/デスコア~もしくはモッシーなモダンメタルコアバンドの影響を表に出して「現行バンド!」という感じになろうとしていたのですが、僕達自身の世代がAs I Lay DyingやHeaven Shall Burn、I Killed the Prom Queen、Unearth等といった、メタリックHCにメロディックデスメタルの要素を多大に取り込んだ00年代型メタルコアにどっぷり浸かった世代なので、途中から「そのルーツに正直に行こう!」という話になり、現在のスタイルへの基盤が固まりました。
2014年夏からライヴ活動を始めたのですが、その頃はまだ楽曲の方向性が手探りの状態で、曲によっては先述したモダンな風味があったり、激情ハードコア風の曲もあったり、少しデスコア風味もあったり、思いっきりメロデスに寄った曲もあったりと、00年代メタルコアを基盤にしつつも少し散漫な状態でもありました。
しかし、15年末~16年初頭辺りに「This Is The Black」という僕達の中でも決定的な楽曲が完成してから今の方向性にかっちり固まり、そこからはよりメタルコアの持つ即効性を前面に出し、加えて僕個人で14年頃から掘り下げ始めたArkangelやUndying等のニュースクールハードコア/エッジメタルの影響やビートダウンHC等の影響も徐々に組み込みつつ、僕達流のリフオリエンティッドな“00’s style Metalcore”が出来てきました。
2/24リリースの初の正式音源(EP)では、今までの楽曲の中でも僕達らしいスタイルがしっかり詰まった、セットリストでも定番の楽曲が収録されています。
“This is the black”はほんとにこれぞメタルコアという曲で、必殺リフとエモーショナルな展開とビートダウンで自然と拳が上がるアンセムと呼べる曲ですね。
ケンジさんがWCIMBを結成する前のバンドとWCIMBの決定的な違いは何ですか?それと、曲はどんなふうに作ってますか?曲を作る上で大切にしているところも教えてください。
前はメタルコア/スクリーモバンドとして、11年夏-12年春頃という短い期間ではありますが神戸を中心に活動しておりました。
もっとメインストリーム寄りの志向で変な言い方かも知れませんが、「売れてやる!」という雰囲気があったと思います。
前バンドも僕が最初に声を掛けて作ったバンドであり、僕が作った曲も多かったので今のWCIMBに通じる雰囲気もあるメタルコアが基調だったのですが、曲にはキャッチーなメインストリーム型スクリーモ風のクリーンVoのサビがフィーチュアされていたり、今思えば所謂“売れ線”的なサウンドでした。あとヴォーカリストが女性で、スクリーム/歌ともに巧かったということもあり、そういった面でも少し注目されたバンドだったと思います。
バンドのスタンスや主なメンバーの志向に関しては、今で言うところの「ラウドロック」に近い感じだったかも知れません。
曲に関しては、現時点では前述したThis Is The Black等含め僕が作っているものが比較的多いです。以前は基本的に僕がインスト状態の楽曲を作り、メンバーにそのインストデモのmp3を送り、皆で合わせていって、そして練習の中でVocalラインを作っていって、曲によってはアレンジを加えていきつつ...といった形でやっていたことが多かったです。
(ちなみにThis Is The Blackは最初からほぼ今のような形で改造もなく、メンバー皆即効「これだ!」と気に入ってくれた曲なので、僕としては凄く鼻が高い自信作でもあります笑)
ここ最近ではスタジオでのセッションにて楽曲を作るようになりまして、例えば他のメンバーが「こんな曲が欲しいな~」といったらそんなイメージのリフをまず即興で弾いて作って、それを繰り返しながらドラマーはそれに合ったパターンで叩いて行きつつ...といった形を取ってやっております。メンバーそれぞれがアイディアを出し合いつつ、それぞれの持ち味やアイディアがしっかりと活きた曲になってくるので、上手く言えませんが「あぁ、これバンドって感じだな~」と思いながら楽しく作っております(笑)
「Vendetta」という曲と(お客さんからYoutubeにて映像のアップされた“New Song”というタイトル未定の曲)の2曲はセッションにて作った曲です。
そして、このバンドでの曲作りに関して大切にしていることは、簡単に言うと一発でかっこいいと思えるような曲、即効性のある曲を作ることを心掛けております。これに関しては恐らくメンバー皆同じ心持ちかと思います(笑)ジャンル的にポップではないですが、キャッチーであるようにしております。
僕自身、どんなにブルータルな曲でもある種のキャッチーさを感じられる、もしくは曲の「顔」のようなものを直ぐに感じられるような楽曲が好きなので、そのことも影響しております。
そして僕達のようなリフ押しの音楽性に関しては、ある意味ギターリフが一般的な大衆ポップスで言うところの「歌メロ」の役割を果たしていると僕は思っております。(勿論Vocalや他のパートを軽視している訳ではありません)
なので、ギターリフは必ず自分が一発でかっこいいと思えるような、曲の主軸として活きるようなものが作れるよう心掛けております。
そして何より、バンドメンバーである僕達自身が「かっこいい!」と思える曲を作るということを一番大切にしています。自分達が自分達の曲に夢中になることが最も大事だと思っております。
また、This Is The Black然り自分達の求めているように完成した楽曲はライヴをやっている時でも確実に受けているので、WCIMBに対して求めている物が自分達とお客さんの間でも合致して通じ合っているのかな、とも思います(笑)
なるほど。意外と今はセッションで作っていってる感じなんですね!面白いです。
曲を作る時って、誰かが1人で作り込んでスタジオに持ってくるパターンと、簡単な素材だけスタジオに持ち込んでセッションで皆で組み立てていくパターンがあってどちらも良さがあります。ただ、1人で苦労して作り込んで持って行ったものが皆で合わせると『何か違う』こともよく起こることで、セッションで作り上げる良さって、机上では生まれない良いグルーヴが出るところかなと思いますね。
あと、楽曲のキャッチーさって大切ですよね。まず演奏してる自分たちが好きになれないと駄目ですし。
ひでぴ~さんが動画で上げた“New song”もかっこいいですね。リフが強くてエモーショナルでWCIMBの良さがよく出てます。僕だけかもしれないですけど、何かどこかでこの曲のリフ聞いたことあるな~と思ったらKREATORの“terrible certainty”(1:00あたりから)でした笑。
WCIMBは前にやっていたバンドよりコアな音楽性で、アンダーグラウンド寄りなんですね。よりアンダーグラウンドに行こうと思ったのは、なぜですか?
WCIMBをやろうとする2012年より少し前から、Youtube上にもアップされている「HARDCORE PRIDE6」という2006年に関西で行われていた企画のビデオを凄くよく観ていて、それに出演していたEDGE OF SPIRITやGNZ-WORD、CENTER WRONG UNIT等といったメタル要素多大でかつハードコアらしさもしっかりクロスオーヴァーしたサウンドを出すハードコアバンドに熱を上げていたのが一つのきっかけかもしれません。
「こういうバンドは、メタル要素がっつりにも関わらずしっかりとハードコアが基盤で自分の好きな要素が絶妙に混じってるな...こんな音を出すバンドにいつかはなりたい!」と自分の中で思っていたのは確かです。
また、2014年くらいから僕がニュースクールハードコア/エッジメタルに夢中になり始めたので、その要素が僕自身に徐々に出てきて、メンバー達もそれを察してくれて...そういった影響もアンダーグラウンド寄りになった理由もひとつだと思います(笑)
あとは、同じ地元ということでsekienの企画に何度か出演させて頂いて、各地のハードコアパンクやいわゆる激情系のハードコアバンドとも共演しつつ、それらのバンドのライヴの持つパッションにも影響されていったこともありますね。
またライヴに関してなのですが、WCIMBのヴォーカリストであるDSKはこれが初めてのバンドということもあり色々と苦戦していたのですが、2015年に大阪のROARというメタリックハードコアバンドと共演して、そのバンドには夏郎君というフロントマンがいるのですが、彼の凄まじい熱量を放つステージングやハードコア・ヴォーカリストとしての熱い叫びっぷりをみて、僕達は勿論DSKがもの凄くインスパイアを受けたみたいで、そこからDSKがブラッシュアップを重ねつつどんどん化けていって「ハードコアバンド」としてのフロントマンらしくなっていったのもポイントだと思います。
僕達自身同じメタルコアという音楽性でも、方向性がしっかり定まる前のWCIMBはもう少しメジャーよりというか、メタルコア~モダンメタリックHCのトレンドも意識していたのは確かです。それを通過し、よりアンダーグラウンドの洗礼を受けながら自分達独自のメタルコアを追及していっている結果、僕達自身の出来るライヴの本数自体は少ないものの、海外から来るメタリックHCバンドの来日ライヴや、十二所戦GIGのようなジャパニーズHC/激情/ネオクラスト系のイベント、モダンメタルコア/ラウドロック系のイベントまで呼ばれるようになりました。
同じ「コア」と付く音楽でも端から端までといった感じで凄く幅広く呼んで頂き、そしてそれぞれのシーンで「かっこいい!」と言って貰えるのは本当に嬉しいです。
まだ決して全国区のバンドではないですし、遠方の人がネットに上がっている僕達の映像等を観て「かっこいい!観たい!」と言って下さっている人がいるのもとてもありがたいことです。期待に応えられるよう、これからも頑張っていきたいです。
ROARは前に僕も見たんですが、熱量確かに凄かったです!
ケンジさんが2014年ぐらいからニュースクール/エッジメタルに影響を受けたということなんですが、思想面ではどうですか?ストレート・エッジについての考えを教えて下さい。
海外のニュースクールハードコア/エッジメタルはVEGAN SxE思想を表に掲げている方々が多く、それに伴いLyricにもビーガニズムやアニマルライツに関する内容が非常に多いですが、僕自身はVEGANではありません。
その点を捉えると、思想面に関してはあまり深くは入り込んでいないと言えます。
個人的なレベルで言いますと、元々僕自身ずっと動物が好きなので、動物達をあらゆる面でもっと大事にすべきだという考えは以前より強くなりました。その辺りに関しては海外のそういったバンドに共感し、自分なりに影響を受けているのだと思います。
僕は自分自身の頭の中や自分自身のメンタルで手一杯になってしまう傾向があるので、外側(社会)をしっかりと見て、そして外側を巻き込んでいく思想の形を表明することを考えたことがありません。僕は基本的に外側に向く余裕がなく、どんどん内側に入っていくタイプの人間なのだと思います。
ビーガニズム然りポリティカルな姿勢然り、Lyric等でそういった姿勢を全力で表明するバンドに対しては、あまりしっかりと汲み取れないことを申し訳なく思いますが、僕は音や曲そのもの、もしくはそこから放たれるエネルギーに共感性を覚え、日々そこから強く影響を受けております。(上手くは言えませんが...)
また、音楽とはまた関係ないのですが、少し前からネット上にてわざわざVEGANをバカにするような書き込みや呟きを見掛けることがあります。
その逆にわざわざ反感を買うような姿勢で自論を展開するようなVEGANの方をたまに見掛けるのも事実ですが、そうではないVEGANの方のほうが大半だと思いますし、頭ごなしに否定する人はVEGANも1つの生き方、考え方の1つだと言うことを認識し、真っ向から否定せず、広い視野を持つべきだとは思います。
ストレートエッジに関しては、僕がまだ10代の時、まだハードコア自体を本格的に知る前に初めて知り、享楽的な側面も強いと勝手に思っていたメタル/パンク等のエクストリームなロックシーンにおいて「こんなスタイルがあっても良いんだ!」と感心したスタイルでした。
僕自身は思春期からずっとアルコールやタバコ、ドラッグの類い等にも一切興味が無かったので、「飲まない、吸わない、ヤらない」というMinor Threatの曲に沿えばそれは元から僕自身に合っていたスタイルでした。
また、有名無名問わずアルコールや性などに溺れがちな話をさも武勇伝のように語るロックシーンに対してとても反逆的で中指を立てているスタイルに見えて、僕には非常に魅力的に写りました。
何より、アルコールやタバコ、セックス、ドラッグ、ギャンブル含め、嗜む程度ならまだしも(ドラッグは良くないですが)、とにかくただひたすら愚かな欲望に溺れて無様な姿を晒している人は本当に見苦しいと思いますし、それらを利用して悪事をする人達も嫌いです。
そういった汚い世界、愚かな欲望やそれを操る悪人に支配される世界を真っ向から否定するようなストレートエッジというライフスタイルは非常にハードコア的であり、ロック本来の持つ真の反逆性が120%出ていると思っております。
それが僕にとって、ストレートエッジというライルスタイルに関する最も惹かれる部分です。
個人的なことですが中学~高校生の時、嫌いなタイプの同級生達がやたらタバコを吸った自慢、ヤッた自慢やアルコール飲んだ自慢的なことをしてたのを見てきたというのも、「お前らと俺は違う!」といった感じに僕がストレートエッジになった理由の1つに含まれると思います(笑)
もう一つ、僕自身がアルコールに関して、飲まないということに対して否定されるような場面が多々ありました。
「何で飲まないの~?」ならまだしも、好きじゃないと言っているにも関わらず「飲めよ」「飲まないと社会やバンドでやっていけない云々」「付き合いが云々」と説教までされる場面がたびたびありました。
例えば、僕がハードコアやブラックメタルを全然興味がない人に「聴けよ!何で聴かないの!?聴かないやつは人間性が云々」と言いながら無理やり押し付けることは、誰が見ても良くない行為です。
しかし、「皆が“押し付けは駄目!”と普段から認識してるのに、何故それがアルコールに変わると、“社会の当たり前”として押し付けの暴力がまかり通るんだろう?」と、僕はその理不尽さに疑問を抱きました。
世間から見ればそれはたわいもない、些細な話なのかも知れませんが、僕にとっては理不尽な暴力にも映ります。
アルコール等のみならずとも、そういった意味のわからない理不尽に対してしっかり自分を貫くのがストレートエッジの姿勢の一つだと僕は思います。
僕は言葉に出すことが苦手なので、そういった意思表示を目で見て表せること、そしてある種の魔除け的な意識も込めて、自分自身を音楽として表せるライヴ中は手の甲に「X」を書いてストレートエッジであることを表に出すことにしました。
僕はあくまで個人の主義主張であり、バンドメンバー全員に「ストレートエッジバンドとして行こう!」というつもりはありませんし、啓蒙するという姿勢もありません。
自分自身をはっきりと貫くために、これからもストレートエッジでいようと思います。
ストレートエッジも色々な議論があると思うんですが、他の誰かへの押し付けじゃない『自分はこうなんだ』という自己表明としてのストレートエッジ。分かります。
僕もストレートエッジではないですが、実は手の甲にXの傷がついています。これは若い頃、感情が高ぶってやった跡なんですけど…ケンジさんの手の甲のXを見て、あの時の自分も、何か言葉にできない憤りや悔しさがあって、言語化できないからこの複雑な気持ちの表明をXにこめてたのかなと思い返しました。
次に、WCIMBの歌詞について教えてください。どのようなことを歌っているんですか?
歌詞に関してですが、VocalのDSK氏に改めて尋ねたところ、基本的には主に己の感じた怒りや鬱憤・哀しみが基になっているようで、そういった感情をエネルギーとしていかに音楽/ライヴに発散させるか、というところに主軸を置いていると話していました。
Lyricの内容的には直感や気分にも左右されるもので、それはネガティヴな気持ちからだったり、時にはポジティブな気持ちからもあったり、それらから滲み出る力強さからだったり様々だそうです。
楽曲の持つ音のイメージからインスピレーションを受けることも多いようです。
では、WORLD COLLAPSE IN MY BURDENというバンド名に込められた意味を教えてください。それと、2020年のWCIMBの展望と目標を教えてください。
World Collapse In My Burdenは、そのまま「己の苦しみの中で世界が崩壊する」というネーミングで付けたのですが、思い返し改めて自分の心を掘り返したら、名付けた自分の中でも2つの意味合いがありました。
1つ目は「自分自身の苦しみは、今自分自身が見て感じているその世界を崩壊させる」ということです。
例えば鬱的な症状でしたり、自分の無力さを痛感したり、耐え難い怒りや理不尽等に苛まれると、自分のいる世界は不幸の世界=荒廃したディストピアの世界に見えます。
僕自身の個人的な話となるのですが、他者と比較しての自分のあらゆる面での「足りなさ」を強く感じたり、どうしようもない無力感、学校や社会での嫌な出来事、理不尽を味わったり、またはそれを見たりしました。その思いを、このバンド名に籠めたのだと思います。
2つ目は、上で語ったような世界に対して「俺を苦しませるようなこんな世界、崩壊させてしまえ!」とする意味合いです。苦痛の世界を壊してやる!という、取り方によっては他害的ですが、ポジティヴな意味合いでもあります。
名付けた当時、僕は簡潔にこのことをメンバーに伝えたような気がします。
僕は、自分自身が関わり、また自分自身を表現する創作物に関しては己のネガティヴ表現だけで終わったり、とにかく苦しむだけで終わるというのは絶対に嫌で、どのような形であれ最終的に絶対自分自身/自分達が前に向かって苦しみに対してとにかく勝ち上がるような、前向きな方向をくむ流れにしたいと思っております。その思いが、このバンド名にも表れたのだと思います。
(2020年の展望は)やはりまず良い正式音源を出すことが先決です。
そして良いライヴをこなすという基本的なことではありますが、その2つをしっかりとこなしたいです。
目標も、まず良い音源をリリースするということです(笑)
僕達は仕事やプライベートの都合で活発にライヴをすることは出来ないのですが、その中で良い活動をすることが目標です。
まず自分達の納得行く音源を作り、自分達の納得いくライヴをする...これを続けて僕達は勿論オーディエンスも楽しませて行くのが一番の目標です。
あとは個人的なことを言いますと、来年も色んな好きなバンドと対バン出来たら嬉しいです(笑)
バンド名に込められた二重の意味深いですね。僕らもケンジさんと同じで、どんなに絶望的なものでもそこに微かでも光を見出だせるものにしたいと思って曲を作っています。
では、残り3つの質問です。
まず、ケンジさんの大好きなアルバム(曲単位でもいいです)、影響を受けたアルバムなどを10タイトル教えて下さい。
⬛Sex Machineguns - そこに、あなたが...(2trax)
⬛Arch Enemy - Anthems of Rebellion
⬛Mayhem - De Mysterious Dom Sathanas
⬛Emperor - Emperial Live Ceremony
⬛The Haunted - rEVOLVEr
⬛Dillinger Escape Plan - Calculating Infinity
⬛Converge - Jane Doe
⬛Arkangel - Dead Man Walking
⬛Day Of Suffering - The Eternal Jihad
⬛Shed - Shades of Death
本当に10タイトルでは収まり切らないのですが(笑)、僕自身の音楽的価値観の転機となったものや、僕自身のギターリフの創造において大きく影響を与えられたものをチョイスしました。
中一の冬、ミュージックステーションにてSex Machinegunsのメタリックな単音リフを聴いて電撃が走り音楽に目覚め、中三の冬にArch Enemyで壮大な美メロとハーシュヴォイスのドッキングにこれまた電撃が走り、高校時代にはMayhemとEmperorで暗黒面をなぞりつつHauntedでリフとエモーションの美学を詳しく学び、大学生になりDillinger Escape Planに代表されるマスコア勢とConvergeの影響でハードコアの世界に入り、学生卒業後はArkangel/Day of Suffering/Shed等によってニュースクールHCの世界にどっぷり浸たされる...といった大まかな歴史の流れがあります(笑)
上記にてアルバムとしては挙げておりませんが、IN FLAMESとDark Tranquillityは本気で好きなバンドであり、全てのアルバムがマイフェイバリットです。IN FLAMESの創設メンバーによるDimension Zeroも外せません。
そして僕の世代通り、UNEARTHやAS I LAY DYING、I KILLED THE PROM QUEEN、HEAVEN SHALL BURNといった00年代を代表するメタルコアバンドにおける00年代中期頃の作品にも本当に感銘を受けましたし、WCIMBでのリフ作りや曲展開等において多大なる影響を受けております。
また、NO ZODIACやNASTY、FALLBRAWLといったメタリックなビートダウンHC、State CraftやThe Ten Commandments等の国内ニュースクールHC、SANDやEDGE OF SPIRITなどの関西発メタリックHC、その他海外のモッシーな音を出すHC勢等からも沢山影響を受けました。
思い返すと、僕のニュースクール入門時代を彩ったバンドとしてPrayer for CleansingやUndyingも外せません。
...10選どころの話ではなくなってしまい、すみません(苦笑)
メタルとハードコアを繋ぐ強烈なバンドばっかりですね。特に、恥ずかしながら聞いたことなかったんですけど、day of sufferingとフィンランドのshedヤバいですね。あと、個人的にUNDYINGの『Whispered Lies of Angels』めちゃ好きです。
ケンジさんの影響源にブラックメタルの名盤が多いところが意外でした。僕もDISSECTIONとかULVERなどの民謡とクロスオーバーしてるバンドが好きなんですけど、ブラックメタルの影響についても教えていただけますか。
Dissection、Ulver含め90年代のブラックメタル/北欧叙情デス勢は当時ものすごく若いはずなのに、エクストリームな部分と、その地域ならではの土着的な音楽性をとても巧みに融合させていて聞くたびにその素晴らしい楽曲センスに尊敬の念を抱きます。
僕自身、メタル/ハードコアに入り込んだ理由のひとつには、「危険でサグな雰囲気」に惹かれたという所もありました。(ブラックメタルに関してはサグと表現すると少しベクトルが違いますが...)
中学三年生の冬に、当時見つけた中での「最も極限まで危険性を極めた音楽」最初の一枚がノルウェイジャン・ブラックメタル代表のMAYHEMの1stフル「De Mysterious Dom Sathanas」だったので、当時「こ、これはやべぇー!」となり、中三で今後のことに関するイライラがあった事と思春期真っ只中という多感な時ということで、その時期に受けた強い影響が未だに引っ張られているという形です(笑)
最初は「よく分からんけど危険な雰囲気全開で激しすぎるし呪われそうで危ない音楽や!最高!!」程度の聴き方だったのですが、ずっと聴いていくにつれ全8trax1つ1つの持つ豊かな表現力やそれに伴う楽曲完成度の高さ、そして何より90'sブラックメタル以降の持ち味である、激しいトレモロピッキングによる荘厳な暗黒情景を映し出す苛烈で壮大なリフワークに強く惹かれたのが、今日に至るまでの僕の楽曲生成における影響の1つとなって活きております。
WCIMBではもろブラックメタル的なリフワークは少なめですが、部分的にはちょくちょく影響を小出しにしております(笑)
そしてもう1つの強い影響源として同じくノルウェー代表格のEMPERORがいるのですが、彼らの「Empty」という曲を聴いた時、その圧倒的禍々しさにクラシック/シンフォニー要素を交えたアバンギャルドで狂気的、かつインテリジェンスなセンスに初めて触れた瞬間もうカッコ良すぎて鳥肌立ちまくって卒倒しそうになったことを強く覚えております(笑)高校生の頃ですが、本当に強すぎる刺激でした。
彼らはセルフタイトルEP~1stフルの流れを除きアルバムリリース毎に音楽性が違い、全てが素晴らしい作品です。全作品に言えることですが、彼らはシンフォニー/プログレッシヴ要素や複雑な楽曲構造抜きにしてもシンプルにギターのリフワークがあまりに素晴らしく、Evil過ぎる雰囲気全開のフレージングを作りながら叙情味も抜群で、バランスが本当に優れております。
アルバム10選の方には、一番よく聴き、映像の方もDVDで何度も何度も観たライヴアルバムを選択させて頂きました。
やはり自分の中で音楽に関してはリフのかっこよさが最重要事項でもあるので、ブラックメタルに関してもその辺りが最も自分に影響を与えた部分と言えると思います。
あとは、ブラックメタル特有のベールに包まれたような独特の神秘性が凄く良いですね。勿論この辺りはバンドによって様々なのですが、神話的というか、触れてはいけないこの世界の「禁忌」的な神秘を音にしているような、そんな雰囲気が凄く好きです。
それと、2016年に「ウォー・ベスチャル・ブラックメタル・ガイドブック」という書籍が刊行されたのですが、発刊当時にそれを買ってからSARCOFAGO、VULCANO、初期SEPULTURA等といった南米80'sブラック・スラッシュからBLASPHEMY、DEIPHAGO等といったウォー・ブラックメタルを初めてまともに聴いて、世間一般がイメージする90'sノルウェイジャン以降のブラックメタルとはまた違う生っぽすぎる荒々しさにも強く感銘を受けました。
それに大体平行して、BATHORYやHELLHAMMER、TORMENTOR等といった80'sのブラックメタル第一世代系のバンドでしたりVONやROOT、MYSTIFIERといった古めのカルト的なバンドにも強く興味が湧いて、買い揃えたり、あるいは元々持っていたものを改めて聴き直したりしながら自分の好奇心を充たして行きました。
これらのバンドの持つ荒々しさは、僕が90'sニュースクールHC/エッジメタルに対して抱いていた印象の「俺は全力でこれをやるんや!」というプリミティヴな衝動に凄く近いものを感じ取ることが出来たので、その辺りも勝手に親和性を感じてのめり込むことが出来ました。
ニュースクールHCもブラックメタルも...というよりエクストリーム・ミュージック全般どれもそうなのですが、黎明期の作品は得体の知れない衝動が120%詰まってますよね。僕はそういった所にハードコアやメタル本来の核みたいなものをいつも感じております。洗練されたものも素晴らしいですが、原始の衝動は本当に強烈です。
あと余談なのですが、DARKTHRONEの「Transilvanian Hunger」を聴いた時は本当に衝撃でした...当時16歳、人生で初めて聴いたRAWな音楽で、再生した瞬間あまりの音の寒々しさに「あれ?スピーカーケーブルちゃんと刺さってないのかな?」と本気で思い配線を確認した記憶があります笑。
Darkthroneも沢山フルアルバムを出しているバンドですが、バンドらしさを保ちながら作品ごとに好き勝手やっていてとても面白いバンドで好きです。
ブラックメタルはその禁忌的なところ、背徳的なところが魅力なんだと思いますね。現実と決別するための表現というか…。前からずっと思ってることがあって、僕はDISSECTION大好きなんですけど、なんか聞いてると泣けてくるときがあって、なんでこんなに美しいんだろうって思うんです。不思議なんですけど、どこか善と悪の向こうで響いてる音のようで…だから胸を打つのかなと思います。DARKTHRONE、初めて聞いたんですけどこのアルバム良いですね。好きです!
それでは、最後の質問です。姫路のハードコア/メタルシーンについて教えてください。
姫路のシーンですが、姫路自体かなり田舎であるものの、他の地域では例をみないディープな趣向をもつバンドやアンダーグラウンドに関わる人達が点々といらっしゃるのがとても面白いですね。
例えば先輩方であるKUGURIDO、MEANING OF LIFE、DEATHRATTLEの3バンドは同じハードコアのくくりながらそれぞれ違う方向に独自の路線を築かれております。
KUGURIDOはネオクラスト~激情シーンを巻き込んだレイジングな音で全国区ですし、MEANING OF LIFEはオールドスクール/ストレートエッジ系サウンドの大ベテランです。
DEATHRATTLEは他の地域でライブをされることはかなり少ないバンドですが、ステージ含め他に類をみない究極すぎる魑魅魍魎のノイズ/クラストサウンドです。是非ともいろいろな人に見て頂きたいバンドです。
また、若手モダンメタルコア/ラウドロックのWinsethも注目すべきバンドの一つで様々な地域でライブを行い現行のラウドシーンで名を上げているバンドです。
この4バンドだけ見ても、ネオクラスト通過型のレイジングなHC、SxE型、ノイズ/クラスト型、モダンメタルコアと田舎にも関わらず凄く豊富なバリエーションで揃ってるのが本当に面白いです。
僕達自身もこの姫路でニュースクールやメロデスを通過した00's型メタルコアのバンドをやれているのは本当に奇跡だと思います。
またsekien登場以降、ジョージさんたちの力もあって各地の尖った現行バンドや海外バンドがたびたび来姫するようになったのが、一リスナーとしても純粋にとても嬉しく思います。
僕は姫路市民でも端っこのほうなのですが、市内でこのバンドが見れる、対バンできるなんて!というのが本当に多くなったので、本当にありがたいことです。
僕自身姫路市民として姫路シーンと関わるようになったのは今のバンドを始めてからなんですが、過去の姫路シーンの話を聞いていても、非常にディープなバンドが点々といらっしゃったようですし、凄い土壌なのだなといつも思います。
⬛話し手 : KENJI (WCIMB)
⬛聞き手 : Nobuto Suzuki (unfaded)
【KENJI氏(WCIMB)による現行海外メタルコア/エッジメタル/ニュースクールHCバンド紹介】
海外シーンに関しては、近年の90'sスタイルのブームと合わせるように少し前まで各地で90's型ニュースクールHC/エッジメタルもちょっとした盛り上がりがありましたが、最近では落ち着いた感があります。そんな中で単なるリバイバルや焼き直し製法に頼らない面白いバンドも沢山出てきました。地域毎のシーンではなく、大まかなジャンル内のシーンとして面白い流れを持ったバンドを紹介させていただきます。
⬛xRepentancex
僕がニュースクールHCに本格的に興味を持ち出す直前辺りに登場したUKのxrepentancexは10年代におけるニュースクールHC/エッジメタルリバイバルのシーンの中でもかなり革命的な存在で、90年代の焼き増しではすまされない怒濤の勢いをもった「“ニュースクール”のニュースクール」感ある楽曲含め物凄い勢いがありました。短い期間で解散してしまったのが残念です。
⬛xDEVOURx
ベルギーのxDEVOURxは90'sニュースクール/メタリックHCを下敷きに独特の捻れたグルーヴとリフセンスを持ったサウンドを構成されておりかなりのオリジナリティを感じます。
⬛TOMORROW
ウクライナのTOMORROWは、メタリックな90's系SxE/ニュースクールを継承しながらも、個人的にはどこかNEUROSISにも通ずるような重々しい感情の渦巻きを感じ取れました。
⬛BREAK THROUGH
オーストラリアのBREAK THROUGHは、ニュースクールHC/エッジメタルの括りとはまた違いますが、Disembodiedなどの音の継承を感じさせながら、モダンさも備えもつ異常にダークなヘヴィネスをもつハードコアサウンドながらVo氏のルックスがかなりゴス&ヴァンパイアで00年代スクリーモ/メタルコアを彷彿とさせるファッションセンスをしているのが僕世代にドンピシャです(笑)。
⬛xGnapenstobx
今は改名したテキサスのxgnapenstobxというハンドは、元々はディプレッシヴブラックメタルプロジェクトでありながら、バンド編成になった17年末発の4trax epの音は初期UNDEROATH、spread the diseaseの流れを継いだ壮絶なブラッケンド派ニュースクールの血を感じさせるものでした。このバンドもライブではVo氏が00年代スクリーモメタルコアを感じさせるゴスちっくなファッションをしていたようです。
xgnapenstobx on 35mm bringing the underOATH revival back. pic.twitter.com/wV8UeoSCEf
— raymond (@pityvoted) April 27, 2019
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